2024年5月〜2F洋室、1部屋空きますお問い合わせ

松本十帖。浅間温泉街を丸っとリノベーション。

2022年7月23日(土)、松本市浅間温泉にある『松本十帖』がグランドオープンします。 『松本十帖』は、ブックストアのあるブックホテル「松本本箱」と、ベーカリーやセレクトショップを備えるホテル「小柳」、そして、「おやきとコーヒー」、「哲学と甘いもの」という2つのカフェをあわせた総称。

長野県松本市の浅間温泉に位置する「松本十帖」は、〈自遊人〉が手がける複合施設であり、創業336年の歴史を有する老舗旅館「小柳」の再生プロジェクトを包括するものです。このエリアは通称「松本の奥座敷」と呼ばれ、1300年以上にわたる歴史を持つ浅間温泉がその魅力の中心となっています。

江戸時代には松本藩の城主が訪れ、湯治場として発展してきたこの場所では、今なお地域住民によって利用される共同浴場が点在しています。歴史的な趣を残す一方で、明治以降は多くの文人に愛され、昭和に入ると団体旅行客で賑わった歴史も刻まれています。

しかしながら、近年では経営難に直面する旅館が増加し、時代の変化とともに温泉街が寂れつつあります。これは浅間温泉に限ったことではなく、全国的な傾向とも言えるでしょう。

そこで、「松本十帖」では地域全体の再生を目指すプロジェクトが展開されています。古き良き伝統を尊重しつつ、新たな息吹を取り入れ、地域の魅力を再発見し、再び賑わいを取り戻すための取り組みが進行中です。地域住民と連携し、持続可能な発展を目指す「松本十帖」の挑戦に期待が寄せられています。

自遊人が小柳の再生を引き受けたのは2018年。当初は後継者不在による廃業の危機に瀕していた小柳旅館のリノベーション事業からスタートしたが、プロジェクトの進行に伴い、温泉街全体に潜む課題が浮かび上がりました。高齢化や空き家の増加などの問題に直面し、小柳旅館の再生だけではなく、まち全体のエリアリノベーションプロジェクトへと発展していきました。

特筆すべきは、このプロジェクトが公的資金の投入なしに、自らがリードしている点です。同様な問題を抱える他の温泉街再生プロジェクトとして、今後注目を集めることでしょう。

「小柳という旅館を再生するだけではなく、浅間温泉そのものが活性化していかなければ、地方都市の温泉街にとって持続可能とはいえないのではないか?」という疑問に対するアクションは、松本十帖の至るところに散りばめられています。浅間温泉というまち全体の動きとして、ポジティブな変化が生まれつつあるのです。

2020年に突如として訪れた新型コロナウイルスの影響により、〈松本十帖〉は営業が難しい状況が続きました。夏頃から一部の施設が順次プレオープンしたものの、思うように運営できない厳しい状況が続きました。しかし、その後の2年間の努力の末、2022年7月にようやくグランドオープンを果たし、本格的な運営がスタートしました。

敷地内には〈松本本箱〉と〈小柳〉を中心に据え、大浴場を改装した〈book store 松本本箱〉、テーマを「ローカル・ガストロノミー」としたレストラン〈三六七〉、ファミリーダイニングとして親しまれる〈ALPS TABLE〉などが存在します。また、土産品ではなく、県内外からセレクトされた日用品や雑貨、食品を扱うショップ〈浅間温泉商店〉や、信州産小麦粉を使用したパンを製造・販売するベーカリー〈ALPS BAKERY〉など、様々な施設やお店が楽しめます。

さらに、敷地外にはふたつのカフェも点在し、これらの施設は宿泊者だけでなく、まちに住む人や日帰りで訪れた人も利用できる工夫が凝らされています。〈松本十帖〉はまさに「人が歩くこと」で生まれるまちの風景を彩る新しい拠点として、地域に活気と新たな息吹をもたらしています。

ホテルのレセプションを兼ねたカフェ〈おやきと、コーヒー〉では、信州名物のおやきとハンドドリップコーヒーでチェックイン時に宿泊者を迎える特別なウェルカムサービスが提供されています。面白いのは、宿泊者の駐車場が敷地内になく、約3分歩いてホテルに向かうというユニークなシステム。これは温泉街を人々が回遊するイメージを反映し、閉じられた旅館を開かれた場に変える意図が込められています。

もう一つのカフェ〈哲学と甘いもの。〉は、90代のひとり暮らしの土地の所有者が、建物の維持や管理が困難になり、プロジェクトの一環として始めた経緯があります。浅間温泉には空き家が100軒以上もある中、こうした店舗の活用が一つの解決策となる可能性を考えています。

このプロジェクトにより、ホテル目の前の「湯坂通り」は江戸時代から続く通りでしたが、以前は日中に人通りがほとんどなかったと言います。しかし、プロジェクトが始まったことで、歩行者が増え、浅間温泉のまちに新たな活気が生まれています。支配人の小沼百合香さんは、「人が歩いているだけで、まちの雰囲気って変わると思うんですよ。さまざまな人が行き交う、まちの風景そのものをつくりたい。そんな意味合いもあります」と語ります。

温泉街はもともと歩いて楽しむ場所でした。しかし、昭和の中頃になると、団体客が大型の観光バスでやってきて、宿にこもって楽しんだ後はそのまま帰るというスタイルが一般的になり、まちを歩くことが減少しました。この時代の変化に伴い、各地の温泉街が寂れていく傾向が見られ、特に団体客に合わせて規模を大きくしすぎた旅館が経営難に陥るケースが増加しています。

しかし、旅や観光のスタイルは時代とともに変化します。浅間温泉のように、温泉街も変わろうとしています。そのためには、このまちに住む人々や訪れる人々、そして関係者全ての存在が重要です。それぞれの立場からの視点や行動が、温泉街の未来を確実に変えていくでしょう。

2022年7月23日(土)、松本市浅間温泉にある『松本十帖』がグランドオープンします。 『松本十帖』は、ブックストアのあるブックホテル「松本本箱」と、ベーカリーやセレクトショップを備えるホテル「小柳」、そして、「おやきとコーヒー」、「哲学と甘いもの」という2つのカフェをあわせた総称。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次